1990年公開
監督:ペニー・マーシャル
主演:ロバート・デ・ニーロ
あらすじ
1969年、ブロンクスの慢性神経病患者専門の病院に赴任して来たマルコム・セイヤー医師。
ある日、患者たちに反射神経が残っていることに気付いたセイヤーは、ボールや音楽など様々なものを使った訓練により、患者たちの生気を取り戻すことに成功する。更なる回復を目指し、セイヤーはパーキンソン病の新薬を使うことを考え、最も重症のレナードに対して使うことを上司のカウフマン医師とレナードの唯一の家族である母親に認めてもらう。
当初はなかなか成果が現れなかったが、ある夜、レナードは自力でベッドから起き上がり、セイヤーと言葉を交わす…
「レナードの朝」という邦題のセンスが素晴らしい
鑑賞し終えた後で、改めてこの邦題に感心した。ちなみに原題は「Awakening」
洋画の邦題ってしょうもないものが多いけど、たまにこういった内容に合致しつつ洒落た言葉で表現したものが出てくるから侮れない(?)「天使にラブソングを…」とかね。
本作は、医師オリバー・サックス著の医療ノンフィクションを元にした映画。慢性神経病の主人公レナードが、新薬によって30年ぶりに目覚めるという内容。…いやはやセンスのいい邦題つけたよね。
テンポはゆったりとしていて、派手さはなく、患者と医師とのドラマを控えめに淡々と描いた作品。
主人公レナードを演じたロバート・デ・ニーロが素晴らしい。安心の素晴らしい演技。
薬の投与前、投与後、副作用、効果が切れる寸前の状態と、4つとも全然違う演技で、まるで別人のようでもあった。ただ一貫して表情は、長い眠りから覚めたばかりの子供だったのも素晴らしい。
目覚めたレナードは後々、自由に外出しようとしたり、女性に恋をしたりする。そしてその変貌ぶりに彼の母親はショックを受ける。子供の頃のおとなしく控えめな彼じゃなかったからだ。
だが果たしてそれは本当に薬の副作用なのだろうか?
確かに子供の頃から30年もの間眠っていたから中身も子供のはずだ。
だが子供は親の知らないうちに急速に成長をする。環境も劇的に変わって、性格も一変したかもしれない可能性だってある。
何より眠っていた30年間も成長を続けていたという可能性もあるのではないか?肉体的にではなく、精神的に。
レナードは眠っていると見せかけて、実は無意識のままで知覚やその他感覚はあったのではないだろうか?実は見たり聞いたりすることはできていて、そこから知識を得て、母親も本人も知らないうちに成長を遂げていたのではないか?
レナードはちゃんと子供から大人へと成長を遂げていて、目覚めた後も無意識にそれを自覚していたのではないだろうか?
そんなレナードがセイヤー医師に影響を与え、変化を齎したと考えると胸熱ではなかろうか?生きていることは素晴らしいというテーマがより深いものに感じないだろうか?
…クソみたいな考察でホント申し訳ないが…
一番の名シーンはレナードとポーラの食堂でのダンス。
直前でのレナードの会話と、去っていこうとする彼を引き止めるポーラからのダンスシーンは自然な描写で美しかった。痙攣も治って微笑するレナードも良かった。
ロビン・ウィリアムズの演技も、デ・ニーロに負けないほど素晴らしかった。セイヤー医師の人付き合い苦手な性格が、セリフでなく細かな演技で描写されていたのが良かった。ダンスシーンやレナードとの2ショットシーンとか。
しかし「グッドウィル・ハンティング」といい、ロビンはこう、「人生にくたびれた医者」ってイメージが根づいちゃったな。
総評…生きていることをテーマとした、優しい気持ちになれる映画